日本では、奈良・平安時代のころには盛り塩が行われていたようで、由来にはいくつかの説があります。

  1. 神道由来
    神道では、塩には穢れ(けがれ)を祓い(はらい)清める力があるとされており、行事で用いたり祭壇に供える神饌(しんせん)に用います。また、「古事記」には、黄泉(よみ)の国から戻った伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が穢れを払うために、海水で禊(みそぎ)を行った、という故事もあります。盛り塩の由来イメージ
  2. 晋の武帝の故事由来
    晋代の武帝という王が、後宮にいる女性を訪ねる際のことです。宮中にはたくさんの美女がいたため、羊車が停まったところをしとねの宿とすることにした武帝。後宮にいた胡国出身の女性・胡貴嬪は武帝を惹きつけるため、戸口に羊の好きな竹の葉を差し、塩水をまいて羊車を引き寄せ、武帝の寵愛を独り占めしたというものです。日本に羊が入ってきたのは明治時代であるため、日本の盛り塩の起源とするには少々説得力が乏しいとされています。
  3. 秦の始皇帝の故事由来
    始皇帝は三千人もの女性を囲っており、訪ねる宿を毎日自分で選ぶのは一苦労。そこで、牛車の牛が止まった所をその晩の宿とすることにしました。宮中にいたある賢い女性は、牛が好きな塩を門前に置いて牛車を留め、その女性は皇帝から寵愛(ちょうあい)を受けたというものです。しかしながらこの話の典拠は不明です。
盛り塩イメージ

そのほか、旧約聖書や新約聖書で塩は象徴的に扱われており、カトリックや正教会イギリス国教会などで使用される聖水にも、塩を少量入れるようです。また、エジプトではミイラ作りに塩が利用されていたこともあります。盛り塩の由来がどこにあるのか、真相ははっきりしませんが、日本だけでなく世界中で、塩が浄化作用・防腐作用のあるものとして考えられていた、ということは言えそうですね。